日本FDE協会
現場実践・プロジェクト事例

FDEが現場で最初の1週間にやること

FDEが現場で最初の1週間にやること

FDE 最初の1週間をどう過ごすかで、プロジェクト全体の成否がかなり決まります。私たち日本FDE協会は、技術とビジネスの両面を現場で実践する立場から、この立ち上がりフェーズの動き方を整理してきました。この記事を読めば、現場に入った直後に何を見て、誰と話し、何を作るべきかがわかり、自分のプロジェクトにそのまま応用できるようになります。ここでのFDEはForward Deployed Engineer(顧客の現場に入り込むエンジニア)を指し、ディスク暗号化の略語ではありません。一緒に考えていきましょう。

FDE 最初の1週間で目指すゴール

最初の1週間のゴールは、いきなり課題を解くことではありません。「この人は現場をわかっている」という信頼を得ることと、後で効く判断材料をそろえることです。ここを飛ばして開発に入ると、現場が本当に困っていない機能を作ってしまいます。

「作らない」ための1週間でもある

顧客から「最初に『それ、本当に必要ですか?』と言われたのが衝撃だった」という声をいただくことがあります。不要な開発を止めるには、現場の実態を自分の目で見る時間が要ります。最初の1週間は、作る根拠と作らない根拠の両方を集める期間だと捉えています。

1〜2日目:業務を自分の目で観察する

初日からヒアリングシートを埋めにいくのは早すぎます。まずは現場が普段どう動いているかを、隣で見せてもらうところから始めます。人は「困っていること」を言葉にするのが苦手で、手が勝手に処理している手作業ほど本人は無自覚だからです。

誰が何をどの順で触っているかを追う

ある製造業のクライアントの現場では、入出荷の担当者の画面を1日横で見せてもらいました。すると、基幹システムに入力する前に、いったんExcelに転記して確認する非公式な手順が見つかりました。当人は「当たり前の作業」だと思っていて、ヒアリングでは一言も出てこなかった工程です。観察が先、質問が後という順番が効きます。

用語と登場人物をメモする

現場には独自の呼び方があります。同じ帳票を部署ごとに別名で呼ぶことも珍しくありません。この段階で用語集と関係者の役割を書き留めておくと、後の設計で認識のずれを防げます。ヒアリングの深め方はFDEのヒアリング術も参考になります。

3〜4日目:課題を数字で整理する

観察で見えた作業を、工数とコストで測ります。提案はROI・コスト・工数で裏付けるという考え方を私たちは大切にしています。数字がないと、現場の「なんとなく大変」が優先度に翻訳できません。

月あたりの作業時間を先に出す

「その作業、1回何分で、月に何回ですか」を淡々と積み上げます。先ほどの製造業の例では、転記と確認だけで月に十数時間が消えていました。時間を出すと、経営層への報告でも現場との合意でも話が一気に噛み合います。数字で語ることが、判断を早くします。

やらないことを決める

観点

見るポイント

頻度

毎日発生するか、たまにか

工数

1回あたりの時間×回数

属人度

特定の人しかできないか

統制

権限やログの整理が要るか

統制の観点を初週から入れる

権限管理やログ、監査証跡をどう残すかは、後から足すと手戻りになります。SaaS企業の経営者から聞いた話では、成長後に統制対応を外注して当初の何倍もかかったとのことでした。初週の整理段階で「この業務は誰が触ってよいか」を確認しておくと、設計が楽になります。

5日目:小さく動くものを見せる

1週間の締めくくりは、完璧な要件定義書ではなく、動く試作です。完璧を目指す前に動くものを見せてフィードバックを最速で得る、というやり方が立ち上がりを加速させます。

クイックウィンを1つ選ぶ

初週で作るのは、影響が小さく効果が見えやすい1つに絞ります。スタートアップでの経験から言うと、最初に大きな仕組みを設計し始めると、現場の信頼を得る前に時間だけが過ぎます。転記作業を半自動化する小さなスクリプトでも、現場が「これ助かる」と実感すれば、その後のヒアリングが一気に深まります。プロトタイプの作り方はFDEのプロトタイピング術で詳しく解説しています。

見せて、反応で優先度を確かめる

試作を見せると、現場は「それより先にこっちを」と本音を出してくれます。この反応こそ、2週目以降の優先順位を決める最良の材料です。作ることが目的ではなく、正しい順番を確かめるために作ります。1日単位の動き方は今後の記事で掘り下げます。

よくあるご質問

Q. FDEは最初の1週間ですぐ開発に着手すべきですか。
いきなり本格開発に入るのは避けたほうがよいです。最初の1週間は業務観察と課題の数値化に充て、5日目に小さく動く試作を見せて優先度を確かめる流れをおすすめします。

Q. 現場が課題をうまく言葉にしてくれません。
ヒアリングより先に、作業を隣で観察するのが有効です。無自覚な手作業ほど言葉に出てこないため、誰が何をどの順で触っているかを追うと隠れた工程が見えてきます。

Q. 初週から統制やセキュリティまで考える必要がありますか。
あります。権限管理やログの整理は後から足すと手戻りになりやすいため、初週の整理段階で「誰がこの業務を触ってよいか」を確認しておくと、その後の設計が楽になります。

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